世界脳週間2024 京都講演会

日 時 2024年7月20日(金)14:30-17:00
会 場 東山高等学校(京都市左京区永観堂町51)
https://www.higashiyama.ed.jp/access/
主 催 京都神経科学グループ、NPO法人脳の世紀推進会議
代 表 京都岡本記念病院教育センター / 京都府立医科大学 名誉教授 河田 光博
脳の世紀推進会議 理事長 / 国立精神・神経医療研究センター 名誉理事長
水澤英洋
後援・協賛 国立研究開発法人 理化学研究所 脳神経科学研究センター、ブレインサイエンス振興財団
問い合せ
  • 澤田 寛成 hr_sawada[at]higashiyama.ed.jp
  • 玉井 克樹 k_tamai[at]higashiyama.ed.jp
  • 河田 光博 m-kawata[at]okamoto-hp.or.jp

開催趣旨

ものを探求することは、脳を自由に使い、新たな発見の喜びを知ることにほかならず、世界中の高校生は、私たちと同じように脳について考え、知識を深めようとしている。世界の潮流に遅れることなく、視野を広く持って学びの精神を高めるため、この講演会を通して、「脳が脳について考える」、そんな時間を皆で共有し、新たな自分を見つけることができる。脳科学はさまざまな分野と共通項を持っている、新しい学問である。

ようこそ脳科学の最先端へ:味わいのサイエンスとその医学的展開

14:30 東山高校生による水澤先生の紹介
水澤英洋先生<開会の挨拶>
14:35 東山高校生による樽野先生の紹介(日本語と英語)
講演(約60分)(日本語と英語)
樽野陽幸先生(京都府立医科大学大学院医学研究科 細胞生理学)
15:35 質疑応答(約15分)
15:50 河田先生の紹介(英語と日本語)
15:55 河田光博先生<閉会の挨拶>
16:00 終了
16:15 写真撮影
16:20 自由討議

参加者数

71名(内訳 東山高校生61名(2年生3名、1年生58名)、他校10名(洛星高校2年生7名、京都女子高校2年生1名、1年生2名)教員他10名

イベントの概要

講演者樽野教授が医学部に入学して、なぜ基礎医学研究に進もうとしたのか、とくに教科書に書かれている内容を新たに自分が書き換えたいという願望がうまれた背景を説明された。とくに感覚情報のメカニズムの中で、味覚だけが研究が遅れており、新たなチャレンジ精神(クールな研究がしたい)が芽生え、その結果、古い教科書に書かれている部分が事実と異なっていたのはなぜか、また新たな自分自身の発見によって正しくその内容が書き改められるようになったストーリーを分かりやすく説明された。味覚のサイエンスを通じてチャネルシナプスという新たな概念、言葉を生み出した実験内容を最新脳科学的手法も踏まえて提示され、食文化や人類を取り巻く環境の進化、さらには塩味受容の発達経過から、高血圧疾患に対する医学的展開にまで話が及んだ。

参加者の反応

講演直後の質疑応答において、多数の生徒(東山高校、洛星高校、京都女子高校)たちは、味覚の分子機構から味覚の障害にまで、素直な疑問を物おじせず質問し、それに真摯に樽野教授は答えてくださった。また講演会が終了後も有志が残り、40分ほど自由な質疑応答の続編ともいうべきセッションが繰り広げられた。高校生にとっては味覚受容という内容は教科書にも載っておらず、シナプス伝達機構の基本的な知識も合わせて、研究の面白さが伝わったようであった。

開催者の総括

若々しい樽野教授の、クールな研究態度、発表のスマートさ、歴史的事実から最新の先端的技術を用いた味覚受容のメカニズムについて、何が分かっていて、何が分かっていないのか、その探求を進めるサイエンスの醍醐味が高校生に伝わった様子であった。司会進行も日本語と英語ですすめられ、講演自体も最初は日本語、つぎに英語での発表という、まさに世界を見据えた今回の講演会であった。冒頭に水澤理事長が脳の特殊性、脳は他の臓器と同じように移植できるのか、という疑問を提示され、高校生は「考える」とはどういうことか、考える時間が持てたようであった。